ヒゲの家のヒゲの部屋

敬虔なゆずソフト信者による雑記ブログ。多分感想記事が多い。この人エロゲの話ばっかりしてるよ・・・。

『金色ラブリッチェ』感想。終わり良ければ全て良し・・・じゃないよ全部頑張れよ

どうも、緑のヒゲです。


前回の投稿から1年半ですか。時の流れは早いですね。この間にもちょこちょこ読み物のゲームはプレイしてたんですけど、いちいち感想書くの面倒だなって思っちゃって・・・。

正直は美徳なので、たった今積んだこの徳で長らく更新が滞っていた件の禊は済みましたね。
世界って優しい。


下らない話は置いておいて、今回のゲームはこちら

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『金色ラブリッチェ』です。

毎度の事ながらネタバレ全開の感想記事となりますので、未プレイの方はこんな倒錯したブログを読むのは一旦止めて、お近くの検索窓に「金色ラブリッチェ」と入力し公式サイト等にアクセスすることをお勧めします。

未プレイの人を読者として想定すると、感想記事を書くにあたって作品のあらましとかあらすじ紹介の手間が増えるので、こうして断りを入れることでブログ更新の腰を重くさせている「面倒」という感情を極力減らしていく次第です。

字を大きくしたり色変えたり画像差し込んだりとかもぶっちゃけ面倒なので今後はあんまりしないと思います。




・・・流石にぶっちゃけ過ぎましたか。
今日はいつにも増して堆く積み上がってますね。徳が。


そんなわけで未プレイの読者の存在はぶった切って、共通√感想、個別√感想、総評とやっていきましょう。











共通√

割としっかり目に個別√への伏線を張っているのはいい感じですが、全体的にお話や展開のノリが軽いです。コメディがしたいのか、シリアスな話がしたいのか、どっちもやろうとした結果振れ幅が大き過ぎてゲーム全体のリアリティバランスがちょっとふわふわしてしまっているなという印象を受けました。

決して悪くはないです。お姫様を助けて、変な学校に入ることになって。
最初はクラスに馴染めなかったけど、大きなトラブルを協力して解決することで打ち解ける。お話としてはスタンダードながらも良い流れです。

ただなんというか、シナリオを展開する都合で作品のリアリティレベルを上げ下げしてるのが気になりました。

シルヴィの警護がやたら穴だらけで緩かったり、玲奈は察しが良過ぎる時と察しの悪過ぎる時が混在してたり。

あとやっぱり、個人的にはキュロっていうロボットの存在そのものが良くなかったかなと思いますね。
キーアイテムではあるんですけど、流石になんでも出来過ぎです。

キュロの存在自体が作品のリアリティレベルを下げるんですよね。

キュロに限らず、ゲーム全体の雰囲気、つまるところ「金色ラブリッチェの世界」そのものがギャグに寄り過ぎている印象を受けたので、その「世界」でシリアスな話をされても「でもあんな意味分からんのも居るしな」となる事がありました。



これはシルヴィ√での話なんですけど、シルヴィが手書きの年賀状を2万通書くって話が出てくるんですね。

この話が出る日付がたしか12月中旬ぐらいなんですけど、一通につき1分で書き上げるペースで1日8時間年賀状を書いても、2万通書き上げるのに約42日かかるんですよ。

これは別にもっと現実的な数字にしろって言ういちゃもんをつけているわけでは無くてですね。コメディの描写としては全然有り得るしむしろアリだと思うんです。

ただこういう方向性のコメディって、作品のリアリティレベルが下がってるから許されるわけで。



例えば主人公がぶん殴られて吹っ飛ぶシーンがあったとしましょう。

コメディで吹っ飛ばされた時は次のシーンでは何事も無かったかのように会話してるのに、シリアスなシーンではそのまま怪我をして入院する、みたいな。

同じ世界なのに物理法則が一定じゃない、みたいな。そういう違和感が随所にありましたね。

まあそんな細かいこと気にしてんじゃないよって話なんですけど。
その点を除けばそこそこちゃんとしてはいますし、何よりコメディ主体の作品はとっつきやすいですからね。

とっつきやすいというのはそれだけで作品の魅力の1つとなるでしょう。

また、プロローグの金色から、思い出の箱、金の指輪と順調にミスリードしておいて、最後にラブリッチェマークからキュロちゃんまで持っていく流れは、そっちかよと笑わせてくれる良い構図でした。

それでいて、シルヴィ√やGolde Timeに向けての更なるミスリードの役割も持っている入れ子構造の伏線になっているのはとても美しいです。


続いては個別√の感想をプレイ順で。















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玲奈√

いきなりなんですけどこのルートだけゲームジャンルを間違えてませんか。

自分がプレイしているのは主人公とヒロインの「恋愛」を楽しむゲームだったと記憶しているんですけど、この√って恋愛してなくないですか。
恋愛と言うよりはセフレっていうかなんならソープ・・・おっと、ソープは法律上恋愛してましたね。これは失礼。

この√の何が良くないって、玲奈√と名打っているはずなのに最初から最後までヒロインであるはずの玲奈が蚊帳の外なんですよね。

主人公はただただ玲奈に甘える、玲奈はただただ主人公を甘やかす。

玲奈に自分の弱さを受け止めて貰った主人公は、改めて自分が抱える問題に立ち向かう、と。

ほら、このお話、玲奈いらなくないですか。正確に言うと「玲奈というキャラクターじゃなくても出来る話」だと思いませんか。

この√ってヒロインの話じゃないんですよ。最初から最後まで主人公の話なんですよね。
ちょっと酷い言い方なんですけど、この√のヒロインの立ち位置ってメインキャストじゃなくて主人公の回復アイテムなんですよ。

さっき自分がソープって言ったのはこれが原因で、つまるところ「妃 玲奈」という女の子じゃなくても、包容力のあるタイプの女の人であれば誰でもヒロインの位置に収まれるシナリオなんですよね。

なんなら「ヒロイン」じゃなくてもいい。多分この話の構造なら「親友」でも「親」でも「兄弟」でも同じ事が出来ます。

だってこのお話に必要なのは「主人公を受け止めてあげられる何かしらの要素」であって「妃 玲奈」という女の子では無いからです。

玲奈のポジションにシルヴィを嵌め込んでも、全く違和感無く物語が進むと思いますね。

この√を読む前と読んだ後で「妃 玲奈」というキャラクターの情報開示度が大して変わらないんですよ。

基本はギャルだけど他人の心の機微には聡い所があって、ファッションデザイナーっていう夢を持ってて、コーヒー牛乳がとても好き。

これは全部共通√でやった所です。
個別√で見たいのは「なぜ妃 玲奈はこういう女の子になったのか」っていう掘り下げなんですよ。

なんでギャルなのか。

何故他者との関係性を養うバランス感覚が優れているのか。

どうしてファッションデザイナーを志したのか。

「妃 玲奈」という女の子を形作るいろんなものを掘り下げていって、その過程で主人公とヒロインは惹かれ合って恋に落ち、2人で問題に立ち向かう、って言うのが「妃 玲奈√」だと思うんですよ。

ところがなんですかこの√は。
ヒロインはただ主人公を甘やかすだけ、主人公はヒロインに甘えるだけ。
初体験は恋も愛も関係なく偶然キメたクスリの影響で正気では無かっただけ。

なのにそのまま流れで付き合うと。

そうこうしてるうちに主人公の過去が追いかけて来て、その問題を解決するのは主人公1人。玲奈は見守るだけ。

受け止めて見守るだけなら他のヒロインでも出来ます。自分は「ヒロインが妃 玲奈でなければ出来ないシナリオ」を見たかった。


この際、初体験がキメセク3Pな事なんて些細な問題です。「妃 玲奈√」なのに「ヒロインが妃 玲奈である必要が無い」なんて、いくらなんでもあんまりじゃありませんか?



















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エル√

玲奈√とは打って変わって悪くない出来です。

シルヴィと血縁関係がある伏線もしっかり張られていますし、お話の内容も「このキャラクターとのお話」として綺麗に纏まっています。

自分の「役割」を定義して生きてきた女の子が、主人公との出会いで少しずつその「役割」から離れ、1人の人間として好きなように歩み出す流れは良かったですし、どうして「役割」に準じるようになったのかという部分もしっかり描かれていて好印象でした。

惜しむらくは、エルが主人公に惚れた理由付けが弱い事でしょうか。

ある事情から「恋人のフリ」をするようになった主人公とヒロイン、というのはエロゲの展開としては良く見るものですが、その偽物の恋が本物に変わる瞬間、そのキッカケみたいなのが曖昧だったかなと思います。

偽通い妻してたらなんか一緒に過ごす時間が楽しくて惚れちゃったーというのはまあ分からなくもないですが、どうせならもうちょっと印象に残る強めのイベントが有ればなお良かったんじゃないかな。

















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茜√


この子金色じゃなくて赤色じゃない?

まあ茜色って言うのは夕焼けの色としても使われる表現なので、夕焼けを金色と表現するこのゲームでは茜色も立派な金色という事で1つ。

個人的には全√の中で1番恋愛してたんじゃないかなと思います。

共通√の時点でかなり本気で主人公に惚れてるっぽかった茜ですが、個別√でその好意の理由がしっかりと描かれているのが本当に良かったです。

こういう「何故好きなのか」に対する理由付けは物語においてかなり重要だと思います。「どうしてその人でなければいけないのか」という、恋人という関係の唯一性の確保に繋がるからですね。

ここを怠ると、二人の関係やその関係を前提としたその後の展開が薄っぺらく感じてしまいます。恋だ愛だなんていう精神的な物に対して説得力を求めるのも変な話ですが、少なくとも読み物として読者を「納得」させるような描写をして欲しいなと常々思います。

そして、その点においてこの√は満点です。

走る才能は持っていても走る目的を持たなかった女の子が、ケガという挫折で自分の在り方に自信が持てなくなっていた所に主人公が現れ、手を差し伸べられる。救われる。

こんなの惚れます。納得させられます。

そして、がむしゃらにアタックしてその心を射止める。

この√の上手い所はここからで、この恋のきっかけになる、茜に対する「救い」が、そのまま√後半に「自分を救ってくれた存在の為に、自分を支えてくれる人々の為に走る」という、走る目的の獲得まで綺麗に繋がっている訳ですね。

良いじゃないですか。コンパクトながらもちゃんとやって欲しいことをやってくれています。シナリオの着地も綺麗です。
こういうのでいい。こういうのでいいんです。
エロゲの優等生みたいな√でしたね。


ちなみに余談ですが、自分がゆずソフトを狂ったように好んでいるのは、前述した「こういうの」を超高水準までブラッシュアップした物を安定して見せてくれるからですね。



















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シルヴィ√

悪くは無い、悪くは無いです。決して悪くは無い。
ただ、良いかと言われるとちょっと返答に詰まるような、そういう印象を受けました。

気になったのは、共通√と同じく、コメディ的な部分とそうでない部分の差でしょうか。

シルヴィって、正真正銘ガチで本物のお姫様なわけです。それも強国の。
作中でも良く「国際問題になる」とか「国が割れる」とか、そんな事を言われています。

そんなお姫様を相手にして周囲に無断で婚前交渉するの、普通にマズくないですか。これって本当に国際問題になって現実に国が割れる気がしませんか。

作中では「シルヴィ様の意志を尊重します」みたいに軽く流されてますけど、こんな重大なスキャンダルは軽く流せるのに作品冒頭で主人公がシルヴィを抱えて逃げた事は全く流せずに逮捕か利き腕の損失かノーブル学園への入学を迫るの、違和感あるんですよね。

他にも細かい違和感は色々あるんですけど、全てを総合して思うのは「シルヴィの権力を、シナリオを展開する上で都合よく使える便利な設定として使ってませんか」って事です。

作品冒頭で主人公を許すと主人公がノーブル学園に入らないから国際問題を持ち出して逃げたのを許さない。

シルヴィとくっつかないとお話が終わっちゃうから、政治的なややこしい問題は全部なあなあにしてお忍び婚前交渉してもオッケー。

共通√でも話したこの作品のリアリティレベルの違和感ってこういうところなんですよ。

シナリオの展開上都合が悪い事には出来るだけ蓋をする。無かったことにしたり、強引に事を進めたりする。

なんというか「キャラクターがお話に動かされている」感じがして、自分は苦手でした。

良く出来たゲーム、良く出来たシナリオっていうのは「キャラクターが自分で動いているように見える」んですよね。

実際はそんな事あるわけないんです。全部作者が考えて動かしてるんです。
でも、それを読者に感じさせない。物語を動かす為の嘘をつくのが上手いんです。

キャラクターが行動した結果、お話が転がる。
そういう風に見えるように作ってある。
だからその世界の中でキャラクターが生きているような感覚を覚えて、その世界で精一杯生き抜くキャラクターに魅力を感じる訳です。

その点においてこのゲームは全体的に嘘の付き方が雑というか「ああここはこういうふうにしないとこの先の展開が繋がらないんだな」みたいな、作為的なものとでも言いますか、作者がキャラクターを動かす糸みたいなものが随所にみられて、その点が世界への没入感を損なっているのが残念でした。

とはいえ、お話の流れとしてはこの√も茜√程ではないにしろエロゲしてるなって感じで印象が良かったのも確かです。


特に、主人公がシルヴィと結婚する為にはどうすれば良いかを現実的に考えるくだりは、主人公がシルヴィに対してどれだけ本気なのかを描きつつも、同時に身分の差という問題をシルヴィに恋をする上で越えなければならない壁として捉え、それを乗り越える為にどういう行動を取るかという、このシナリオが目指すゴール、主人公の目標の提示までを行うとても良いシーンだったと思います。




まあ結局軽い感じで交際許されちゃったわけなんですがそれはそれとして。




















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Golden Time 理亜√

圧巻です。

さっきまでの言われようは何だったのか、素晴らしい完成度です。

前述のシナリオ全てにおいて良き友人として見守りアドバイスをくれていた理亜が、満を持して主役を張ります。

通常√を遊ぶ中で少しずつ理亜への思い入れを読者に持たせておき、最後に全部持っていくわけですね。こういう構造はグランド√の存在するエロゲでは頻繁に見られますが、頻繁に見るという事はそれだけ優れた演出という事の証左なわけです。

中でもとりわけ目を見張ったのは、作中における「僧間 理亜」というキャラクターへの気の使い方でしょうか。

エロゲという媒体で、わざわざ喫煙なんていう一般受けしないであろう要素をヒロインに持たせたからには何かしらやりたい事があるんだろうなとは思っていましたが、それを味覚に繋げてきますか。

いくら綺麗とはいえ毎日毎日わざわざ夕日を見に行く理由を、視覚に繋げてきますか。

コメディリリーフだったはずの壁ドンを、聴覚に繋げてきますか。

こういう細かい伏線の束は、本当に上手いことやられたなーと思いましたね。

伏線の配置もそうですが、それを土台として展開されるシナリオも非常に完成度が高かったですね。

これまで「不治の病」という色眼鏡を通してしか自分を捉えてくれなかった世界。
そんな中、1人の男の子だけが「病気の子」ではなく「ただの友達」として自分を扱ってくれる。その男の子と一緒に過ごす時間だけは「1人の人間」として過ごす事が出来る。

そりゃね、惚れますよ。うん。

でも、自分はいつ終わるとも分からない不安定な身体に産まれてしまった。
ならせめて、二人の親友の仲を取り持って、2人が黄金の時間を生きる事で自分の生きた証を残そうと。
それだけを目的に生きていたら、何の因果か親友は再び目の前に現れ、憧れの男の子は自分の事を好きだと言ってくれる。

幼い日に過ごした「黄金の時間」以来、親友の為に歌うというひとつの夢以外何も持てず、ただ死んでないだけの生ける屍だった理亜が迎える再びの「黄金の時間」を描いた√。

だからこその表題「Golden Time」。

『金色ラブリッチェ』という作品はこの√のために存在すると言っても過言では無いでしょう。

中でも自分が一番驚いたのは、永遠に繋がると言われる湖の言い伝えを最後の最後に回収してきた所ですね。

何かしら仕掛けがあるんだろうとは思っていましたが、まさか湖を中心にループの構造で繋げて来るとは。

理亜との時間も勿論ですが、自分は作品やシナリオの構造に魅力を感じる人間なのでこのシーンが1番満足度が高かったですね。

作品の始まりを象徴する「変な箱に入った金のラブリッチマーク」なんていうどう考えても作為的なキーアイテムの存在を「偶然」ではなく「必然」へと変える仕掛けが作品の終わりに存在するこの構造を、美しいと言わずしてなんと言いましょう。

この「Golden Time」シナリオに関しては本当にシナリオへの没入感が強く、それまでの各√で感じていた作品のリアリティへの違和感も忘れてプレイしていました。


総評、の前に。
主人公について

このゲームを通して言える事なのですが、主人公の事があまり好きになれないというか、結局主人公がどういう人間なのかがあまり見えてこなかったなという印象を受けました。

「プレイヤーの分身として存在するのだから変なキャラクターが付いているよりは良い」という意見もあるかとは思いますが、ならそもそも玲奈√を丸々全部使って主人公と幼馴染みの話を広げる意味が分かりませんし、そこまでしたにもかかわらず結局主人公、市松央路というキャラクターは不透明な気がします。

この主人公の不透明さこそが各個別√のシナリオの弱さの根本的な原因ではないかと自分は考えていて。
というのもこのゲーム、ヒロインがいつの間にか主人公に惚れてるんですよね。

本当にいつの間にか惚れてるんです。

幼い日に黄金の時間を過ごしたから、なんてのはこのゲームの中だと理由としてしっかりしてる方で。

そもそも惚れる前から部屋に入り浸りの玲奈とか、わざわざ料理を覚えて晩御飯を作りにくるエルとか。

ただでさえなんで主人公に惚れたかがよく分からないのに、主人公に惚れる前と惚れた後で大して行動が変わらないので余計に分からない。

そして「惚れたタイミングが分からない」ということは「主人公が惚れられるような事をしていない」のと同義です。

この主人公が単独でかっこよかったのは、共通√のサバイバル生活で食事を用意する一連の流れが最初で最後だと思います。
じゃあ全員そこで惚れたのかって話ですけど、流石にそれは無理があります。

主人公がカッコよくなる、カッコよくあろうとするのって、ヒロインと結ばれてからなんですよ。

順序が逆なんです。カッコよくなった主人公に魅力を感じてヒロインが惚れるんじゃなくて、ヒロインに惚れられてから主人公がカッコよくあろうとするんです。
主人公の魅力とヒロインの恋慕に因果関係が無いんですよ。

このゲームはヒロイン視点の描写、つまり「ヒロインの目から見た主人公」のような、第三者目線で語られる主人公の情報が乏しいのも「市松 央路」というキャラクターの描写不足に拍車を掛けています。

なのでプレイヤーも主人公の人間的な魅力が分からないんです。ヒロインが惚れる時点の主人公って、プレイヤーから見ても大してカッコよく無いですから。

だって何もしてませんからね。
成績は悪い、授業はサボる、ヤンキーとつるむ。

プレイヤーは主人公のカッコいいところを全然見てないのに、作中のヒロインはどういう訳か主人公に惚れるんです。
登場人物の心境の変化に対してプレイヤーが置いてけぼりなんですよ。

そのせいで主人公とヒロインの関係を土台にしてお話を展開する個別√が全体的に薄っぺらいんですよね。だってそもそもの土台が適当なんですから。


Golden Time√の完成度が高いと感じられるのは「僧間 理亜」というキャラクターそのものをシナリオの土台に据えているからです。

その土台は、それまでの全ての√で描写されてきた理亜の献身や助言、伏線で作られています。
今までのプレイの中で「僧間 理亜」というキャラクター描写がしっかりとなされていたから、それを土台に築き上げられたGolden Timeシナリオの完成度は必然的に高くなります。

それ以外の個別√は、この「土台」がとにかく脆いです。

この辺の土台作り、主人公や各ヒロインの心理描写をもっとしっかり描いてくれていれば、個別√の方ももっともっと良いシナリオに感じられたんじゃないかなと思います。














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総評

√ごとの完成度に著しい差が存在する不安定なゲームだったな、というのが率直な感想です。

「Golden Time」シナリオに限らず、ゲーム全体であのクオリティ、没入感を演出することが出来れば本当に素晴らしいゲームとして強くオススメ出来ただけに、個別√シナリオの弱さが残念でなりません。

それでもやはり「Golden Time」の完成度は圧巻と言わざるを得ない。

本当に極端なゲームです。



『金色ラブリッチェ』不満点は数多くあれど、何故か満足度も高い不思議な作品でした。